「やさしい家」づくり 第一話 やさしい家とは? 

人にやさしい家、弱者にやさしい家、体にやさしい家、環境にやさしい家とは?
「家」・「住まい」はどのようにあるべきでしょうか?「やさしさ」をキ-ワ-ドに、女性という観点から家づくりの考え方を紹介します。

「やさしい家」づくり 第二話 やさしい家づくりとは? 

やさしい家づくりの有り方とは?住空間のプロデュースは施主とのコミュニケーションが重要なファクターである事、片側通行のコミュニケーションは大変危険である事を論点に紹介します。

「やさしい家」づくり 第三話 設計に「女性」が活きる時 

「男性」という立場、「女性」という立場、それぞれの立場からの設計概念のあり方は?住空間とは感性と実用性が住人と織り成すドラマを表現する場です。

「やさしい家」づくり 第四話 家づくりに求められるもの

やさしい家づくりの有り方とは?住空間のプロデュースは施主とのコミュニケーションが重要なファクターである事、片側通行のコミュニケーションは大変危険である事を論点に紹介します。


「やさしい家」づくり 第一話 やさしい家とは?

今、21世紀を目前にして社会全体いや地球規模で大きな動きが生じ、これまでの既成概念にとらわれない新しい考え方がでてきています。中でも女性の動きは、第1回世界女性会議をはじめとし、日本では雇用機会均等法が打ち出され、ここ10年程の間にめまぐるしく変化し、社会もその動きを受け入れつつあり、様々な職場に女性の進出が見られる様になってきています。

これまで、男性社会と思われていた建築業界にも、女性建築家から工事現場で施工をする女性等、女性の進出が大変目立つ様になってきています。このように、「家」の造り手側にも女性が進出すると平行して、これま「家」を守っていた専業主婦が働きに出るようになり、これまでの「家」・「住まい」のあり方に徐々に変化をもたらすようになってきています。

このような時、「家」・「住まい」はどのようにあるべきか「やさしさ」をキ-ワ-ドに考えてみることにしました。

人にやさしい家とは

様々なライフスタイルに柔軟に対応出来るため三世代同居・若い共稼ぎ・老人夫婦・独身とそれぞれのライフスタイルにより住宅への要求機能は異なります。家を建てる時にはまず自分が現在・未来にどのようなライフスタイルを望みたいかを決めること。その前提がないと全く住まいにやさしさは生まれてきません。

三世代であれば、それぞれの世代のプライバシ-とコミュニティ-の場を住まいの中に確保し、大家族としてのメリットとディメリットを捉え、住まいづくりを決めることです。若い共稼ぎ世代は、効率のよい住まいへの工夫と二人の共有空間の演出などを重視します。あるいは老人夫婦の場合はトイレの手すりなど高齢者向きの配慮と同時に住まいの中にゆとりを取り入れます。また独身者住宅複数の友人との交流の場となるような空間りなど、それぞれのライフスタイルに配慮すべきです。

このように住む人にとって使いやすい家が、結局は「人にやさしい家」と言うことになります。

弱者にやさしい家とは

一般的に弱者とは高齢者・障害者・子供・病人・妊婦などを言い、健常者との対比語として使われます。弱者は時に階段が登れないと言った住まいの中で「バリア(障壁)」を感じる事があります。

大半の施主は、家をつくる時には健康な場合につくることが多く、そのおり自分が弱者に立って考えることは少ないものです。今、バリアフリ-住宅と言うことで徐々に耳を傾ける施主も増加していますが、それは自分のためだけでなく家族全員のためと同時に、その弱者を介護する家族のためでもあります。例えば、段差を無くしたり床暖房を設置したり、さらにはトイレに手すりをつけたり暖房機をつけたり様々な配慮をするようになってきました。

こうしたことは現在すでに、住まいのバリアフリ-を実践充実させる段階からさらに進んで家族全体を考慮した住まいいのためユニバ-サル化(普遍化)といった方向への取り組みが進んでいす。  

体にやさしい家とは

せっかくつくった「新築のわが家」に住めないといった悲惨な話が話題に上がるようになってきました。住宅の建材などが原因となって起こるアレルギ-症状を起こす「シックハウス」症候群と呼びます。その要因には、化学的因子と生物因子があるといわれています。つまり、人々は科学文明の発達により、便利で効率の良いものを追い求めた結果でてきた病気です。そうした原因をとりのぞいた住宅を「健康住宅」といいます。

が、かつての日本の農村に見られた「民家」は全て健康住宅でした。今、改めてこうした日本の風土にあった日本本来の住まいの原点として「民家」を見直しつつ、人が安心して住める住まいへの取り組みが様々な角度からされています。

環境にやさしい家とは

かつて、ク-ラ-の無かったころは、日本の住まいは「夏をむねとすし」と吉田兼好がいっているように、家づくりの本質は夏の過ごしよさに重点がおかれました。人々は自然から身をどのように守るか地域風土にあった長い間の人々の知恵で住まいづくりが行われていたのです。

しかし、文明の発達により、人々は少しでも良い快適性と利便性を求めるようになり、現在では高断熱、高機密までエスカレ-トしてきています。そのために地球資源の無駄使いにより深刻な環境問題にまで及んできています。

今使われている建材はのほとんどは石油製品でできており、二次製品は決して土には帰りません。しかし、かつての木・土・紙などで出できていた民家のような建物はすべてが土に戻るというようなもので出来ていました。環境に配慮したやさしい家を考えるには材料、エネルギ-等への新たな取り組みをして行く必要があります。

「やさしい家」づくり 第二話 やさしい家づくりとは?

施主は建築家に“どんな家が欲しいですか”と聞かれて的確に答えられる人は少くないはずです。それは答えるのに難しいと同時に、案外考えていなかったせいでもあります。というのは部分ではイメ-ジしていたとしてもト-タルで考えている人はなかなかいないものです。が、このことが、家を建てる時一番大切なことです。和風が好きな人に洋風のどんな素晴らしいものを見せても無駄であるように、施主は自分の好みやどのような暮らし方をしたいかを建築家に具体的に伝えることが大切です。


例えば、共働きの主婦が家族との会話をする機会を少しでも多くできる様にするために、台所は対面キッチンにしたいとか、三世帯同居でも入り口は別にしたい等、本当に自分が暮らしたい家は何かを考えないと、本人の希望する家が何か建築家に伝わりません。このことは、面倒かもしれませんが、建て売り住宅と注文住宅の違いです。

そのため、私は、家をつくることはまず施主とよく話し、その上で暮らし方の相談に乗ることと考えています。そのような時のほうがアイデアが浮かびやすく、それは建築家自身の家でなく、他人である施主の家であると客観的に考えるからです。

つまり、医者に行けば体をさらけだす様に、弁護士にはことの事情を全て話す様に、建築家にはこれまでの家族の生活と家の中の全ての持ち物を見せ、住みたい家の希望、住み方かたを話すことです。このことは、家の中へ土足で入り込むことではありません。こうして家の中のを全て理解した上で、その家族にどのようにして差し上げるのが一番良いのか、解決の手がかりが見いだせ提案できるものです。

 

中には、見栄と恥ずかしいとの理由で全く見せない人がいます。今の持物を全て捨てる人は良いですが、それを使うつもりであれば施主と設計者との間にずれが生ずることになります。見せなかったが故に、その持ち物が入らなかったり、新築の家とのアンバランスな家具が持ちこまれたり、空間をだいなしにする事があります。

さらに、家をつくろうとする施主は雑誌・TV・新聞等のマスコミの情報、実物の展示場と情報過多の中で選択を余儀なくされ、時には、プロ並に資料を集めている方もあります。しかし、その知識は、断片的であるため注意する必要があります。

が、反面予備知識があるが故に、提案の理解度は早く積極的になる事もあります。例えば、今高齢化に向かう中、手すりの設置や和風便器を洋風便器にしたり、3階建て等になるときエレベ-タ設置の案を持ちかけると必ず要望される方が多くなってきております。 


また、住空間のアレルギ-性の問題についても家族の中に誰か一人でもその病気を持つ人がいると、相談を持ちかけられるます。つい最近完成した家で、工事の途中に“孫が喘息です。この前TVで自然型の住宅づくりを紹介していましたが今回は無理ですか”との話題がでました。正直大変困まりました。一つは工事材料発注済みで入荷間近であったこと。もう一つは市街地で防火地域の内装制限のかかる所では、木材等がそのまま使用できないことでした。必ずこのことの背景には要望の後先に関わらず、金銭の動きがついてまわることを忘れてはいけません。このケ-スの場合何とか注文品のストップと別材料の手配にて、何とか相互の妥協点にて収めることが出来ました。

こうした施主の家づくりの姿勢・関心事は早い時期からのコミュニケ-ションを通し、引き出し、お互いの信頼性を高めておく必要が大切です。  

「やさしい家」づくり 第三話 設計に「女性」が活きる時

「やさしい家づくり」を考える時イメ-ジとして、女性の建築家に依頼をするとそのような家ができるのではと思われがちです。しかし、ただ短絡的にその様に考えるのは間違いです。確かに女性らしさの「らしさ」の中にやさしさとイコ-ルするイメ-ジがあります。

が、建築は、感性イマジネ-ションの世界で、芸術の領域が大きく左右するものです。そこには性差よりその人のもつ能力・感性の差であることが前提となります。もう一つ大切なことは建築家として建築へ取り込む姿勢に性差はないと考えております。


しかし、男性に依頼するのも女性に依頼するのも一緒であるかというとそうではありません。私はこれまで幾度となく男性が設計したであろうと思われる公共建築物やビルを見てきました。こうした男性の論理でつくられている建物に、大きないらだちを持っております。最近は私も住宅から公共建築と幅広く設計致しておりますが、その場合、私は絶対に男性のスタッフと一緒に仕事をする時には私の意見を主張し、設計に取り入れるようにしています。 


例えば、洗面所に入ると鏡の位置が高すぎて私の様に背の低い者は顔も満足に見えない位置に取り付けてあったり、便所に入ると手荷物も置けない小さな台が気休めに程度に付けてあったり、扉の中のフックが、高い時には2メ-トルもの高さに取り付けてられており飛びあがってても届かない様な時もありました。付けた本人は戸当たり兼用のつもりで邪魔にならないようにとの配慮と思われますが、女性にとってこのフックはバックを掛けるのに必要です。便所では女性は両手を必要とします。住宅では便所に持ち物を持ち込む事は無いでしょうが、公衆便所を使用するときは手荷物をもって入ります。こうした女性の行動をなかなか男性には理解しがたいことだと考えております。 


公共建築物などで一時的に使用する時は、多少の我慢もできるものですが、住宅となると事は違います。住宅は「女の城」とまで言われ一日女性が過ごしたり、また有職婦人でも家事労働をしない人はいません。それくらい女性と住宅の関係は深いものがあります。

この時、女性の建築家は、女性の主婦の立場というかユ-ザ-の立場で要望の意図を理解し対応できます。さらには、再提案すら可能となります。その意味から女性の建築家は、住宅設計に向いていると言われても否定できないでしょう。

建物は人と共につくられ活きて行く生き物です。新築の建物でも人が住まないといっぺんに廃虚となってしまいます。完成した建物、住宅では新たなドラマがその空間でつくられてゆきます。こうした空間の中では、老若男女様々な人間模様が織りなし共に生活していくはずです。当然、そこには男性の論理ばかりが通用するものでもありません。今までは、女性の声がなく一方に偏っていました。

封建時代ならいざ知らず、こと現代においてはなおさらです。しかし女性だけの論理でもなく両方をバランスさせる必要があるはずです。それでこそやさしい住まいといえると思います。  

「やさしい家」づくり 第四話 家づくりに求められるもの

21世紀の新しい時代は複雑系の社会となると言われています。それは一つの価値観でなく、多くの異なる価値観で成り立ち共存できると同時に全体としてバランスがとれると言う不思議な社会となるであろうと言われています。

それは必然的に生活者のライフスタイルの多様化を促す要因となり住宅のあり方もこれらに柔軟に対応できるものでなくてはならないはずです。生活者が「住んで楽しく・快適に過ごせ・自己表現が出来るような住宅」が求められるようになるでしょう。

ここでは、これからの多様な価値観によるやさし家について考えてみることにしました。

生活の価値観

これからの家族構成は、三世帯同居・核家族・シングルと様々である上、主婦が外に働きにでる有職婦人が多くなるとみられます。その上高齢化も進み政府の方針は在宅介護の施策に向かっています。そのことは、住まいのあり方にも大きく影響を及ぼすことになります。こうしたなかで、各家族で様々な工夫をこらし、暮らし方を考えて行く必要がでてきました。例えば、住宅内での家事労働の効率化・共同分担化など、また、在宅介護にむけての住まいの対応等各家族のライフスタイルと共に考えて行く住宅がでてくる事でしょう。

物の価値観

日本人は、個人住宅を持ちたい・欲しいと言う所有願望だけが強く、その要望に答えられる住宅として、建て売り住宅・プレファブ住宅等、日本の工業化のもたらした量産住宅に代表されるものがそれに対応してきました。それは、個人の所得の住宅費にかけられる限界が、ストック性の価値の少くないものにならざるを得ないものでした。欧米に見られるストックの文明は、国全体の財産として蓄積されるが、フロ-の文明を代表する日本では、リニュ-アルもままならず破壊せざるを得なくなり、国富がマイナスに働きます。そのことは地球資源の無駄遣いとなっていきます。 

ストック性の高い住宅は将来に向けて多様化するライフスタイルに対応できるもので、これからはこうしたストック性のある住宅、つまり質の高いものを選択し見抜ける目をお互い養う必要性が生じてきます。

快適性の価値観

現在、住まいは大変便利で快適となってきました。中でも、家事労働が軽減出来るようになった家電製品の数々や暑さ寒さを調整出来る空調機等が普及し、住宅における消費エネルギ-が増大してきました。これからは、地球にやさしい技術開発が進み、人々の意識も環境問題への取り組みが積極的になり、住まいを考える上でも省エネ対策やエコロジ-等を意識するようになるでしょう。例えば、太陽エネルギ-・風力等のクリ-ンエネルギ-を有効活用する「省エネ宅」や少し不便でも自然型の「健康住宅」への取り組みが活発化すると思われます。

情報の価値観

今、コンピュ-タ-の発達は、社会のこれまでの既成概念では考えられない方向へ進んでいます。世界はインタ-ネットによりボ-ダレス化しつつあり、どんどん社会経済はグロ-バル化してきています。 

近未来には、職住近接(サテライト+ステ-ション)や在宅勤務が増加することも予想され住宅のスタイルにも影響を及ぼすことになります。


いずれにしても、21世紀は今以上のスピ-ドで技術が進むものと予想され、同時にこれまでない多様な価値観の中で、これからの家づくりを模索して行く必要があります。

そのため人にも、環境にもやさしい家をつくる必要があります。それ「やさしい家」が完成した時だと考えます。